今、何かと話題になっている年収の壁。今回はその中から年収106万円の壁と年収130万円の壁について、誤解されがちな点について解説させていただきます。

年収130万円の壁にまつわる誤解

まずは年収130万円の壁について。これは年収130万円を超えると、配偶者や親の加入する社会保険の扶養に入れなくなることを表現した言葉です。さて、ここで言うところの年収の1年とはいつからいつまでのことでしょうか。意外かも知れませんが、この1年とは、暦の1年(1/1〜12/31)でも、年度の1年(4/1〜3/31)でもなく、扶養に入ろうとしたタイミングから向こう1年のこと。つまり実績ではなく、収入がいくらになるかの見込みで判断する、ということです。そして、例えばお給料が上がったりして、このままだと年収が130万円を超えそうだなぁとなったタイミングで扶養から外れることになります。ちなみに、ここで言うところの収入には雇用保険の失業給付も含まれるので、退職きっかけで誰かの扶養に入ろうと思っても、失業給付が日額3,612円以上だと年収130万未満にならず、社会保険の扶養に入ることができません。そして今、年収130万円の壁が崩壊して、いくら稼いでも扶養から外れなくなった、だから稼いだもん勝ち、みたいな話が出回っていますが、残念ながらそうではありません。なぜなら、扶養の要件は年収130万円未満だけではなく、例えばご主人の社会保険の扶養に入っておられるのなら、ご主人の収入の1/2以上になったら扶養から外れることになりますし、社会保険の加入の要件は扶養の要件よりも優先されるので、それを満たすほど働いてしまうと、ご自身で社会保険に加入することになり、扶養から外れることになるからです。

年収106万円の壁にまつわる誤解

続いて年収106万円の壁について。これは一定規模以上の事業所(特定適用事業所)に勤務されている方が、社会保険に加入しなければならない要件を端的に表した言葉です。年収130万円の壁は社会保険の扶養に入れるかどうかの話でしたが、年収106万円の壁は社会保険に加入するかどうかの話になります。通常、パートさんであっても、週の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数がその事業所で働く正社員の3/4以上であれば社会保険に加入することになりますが、一定規模以上の事業所(特定適用事業所)でお勤めの場合、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が88,000円以上で、2ヶ月を超える雇用の見込みがあり、学生ではなかったら社会保険の加入対象になります。ここでいう年収106万の根拠は、88,000円x12=1,056,000円ということで、わかりやすくするために106万円ということになっています。年収だけ見たら130万円を超えていないので扶養に入れると思われるかも知れませんが、社会保険の加入の要件は扶養の要件より優先されるので、扶養から外れ、社会保険に加入することになります。先ほど挙げた要件は、すべて満たす必要がありますので、時給が高い等の理由で月額賃金は88,000円を超えていても週の所定労働時間が20時間未満であれば、社会保険の加入対象にはなりません。一定規模以上の事業所とは、現時点(2023年10月現在)では、厚生年金保険の被保険者数101人以上となっていますが、2024年10月以降は、51人以上の事業所になります。

年収の壁・支援強化パッケージ

2023年10月から、期間限定でいわゆる年収の壁にまつわるいくつかの支援策が始まりました。中でも代表的なのが、年収130万円の壁にまつわる被扶養者認定の円滑化と、年収106万円の壁にまつわる1人あたり最大50万円の助成金の創設です。これらにつきましては、御社の状況をお聞かせいただいた上で、最適なアドバイスをさせていただきますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。