従業員さまが妊娠された場合、会社に求められる対応は、産休、育休だけではありません。従業員さまからの突然の妊娠の報告に慌てないように、産前産後休業に入る前、そして職場に復帰されて以降、会社に求められる対応について、改めてご確認いただきたいと思います。

軽易な業務への転換

妊娠中の女性従業員さまが、業務内容が負担になるからという理由でその変更を希望されたとき、会社は他の軽易な業務に転換させる必要があります。ただし、法律等で具体的にその内容が決められているわけではないので、例えば外勤を内勤に変更する、出張をなくす等、ケースバイケースで対応することになります。場合によっては、軽易な業務がないということもあるかも知れません。その場合、新たに軽易な業務を設けて変更させる、ということまでは求められていませんが、だからと言ってこれまでどおり働いてもらうのではなく、その業務内容を見直し、負担を軽減させる等の対応が必要になります。

母性健康管理の配慮

男女雇用機会均等法において、母性健康管理に関する規定が定められています。まずは、母子健康法に定められている妊婦検診を受ける時間の確保。標準的には、妊娠から出産まで14回の妊婦検診が予定されていますが、そのために必要な時間を確保する義務があります。産後についても、医師等の指示により受診に必要な時間を確保しなければなりません。そして妊婦検診の結果、医師等より指導を受けた場合は、その指導を守るため、時差出勤、勤務時間の短縮等の配慮をする必要があります。

妊産婦に対する配慮

妊産婦とは、妊娠中、および産後1年を経過しない女性のことをいい、労働時間に関して配慮する必要があります。まず、変形労働時間制を採用している場合、妊産婦から請求があったらその対象とすることはできず、原則の法定労働時間を超えて働かせることはできません。そして、36協定を締結し労働基準監督署に届け出ている場合、法定労働時間を超えて、または法定休日に働いてもらうことができますが、同じく妊産婦から請求があった場合、時間外労働、休日労働、さらに22時から翌朝5時の時間帯に働いてもらうことはできません。それに加え、これは妊産婦に限った話ではありませんが、女性には就かせてはいけない危険有害業務(具体的な内容については、こちら)というものがあります。さらに、満1才に達しない子どもを育てる女性従業員が請求した場合、1日2回、少なくとも30分ずつ育児時間を与えなければなりません。これは授乳を想定して定められた規定ですが、授乳のためだけに使わなければならない時間、というわけではないのでご注意ください。

産前産後休業

続いて産前産後休業、いわゆる産休について簡単にご説明させていただきます。労働基準法により、出産前6週間(双子以上の場合は14週間)の女性従業員さまが休ませてほしいと申し出たとき、そして、出産後8週間の女性従業員を働かせることはできません。これらを合わせて産前産後休業といいます。ただし、出産前の6週間については、休ませてほしいという本人の申し出が前提になりますので、場合によっては、4週間前から休むということもあり得ます。また、出産後の8週間については、6週間経過後、医師が支障がないと認めた業務に限り、働きたいとの本人からの申し出があれば、働かせることができます。ちなみに、出産日当日は産前休業に含まれます。産前産後休業期間中、給与の支払いがない場合、健康保険より出産手当金が支給されます。

育児休業

育児休業についても、簡単にご説明させていただきます。育児休業は、原則、出産日の翌日から子どもの1才の誕生日の前日まで取得することができます。保育園が決まらない場合は、最大2才の誕生日の前日まで取得可能です。この期間、給与の支給がない場合、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

3才までの子どもを養育する従業員への対応

3才までの子どもを養育する従業員さまが請求した場合、所定労働時間を超えて働いてもらうことはできません。法定労働時間ではなく、所定労働時間となっていますので、各々決められている労働時間を超えてはいけない、という決まりになります。また、所定労働時間を短縮してほしいという申し出があれば、原則6時間に短縮しなければなりません。変形労働時間制の対象者についても、1日6時間にする必要があります。

小学校入学までの子どもを養育する従業員への対応

小学校入学までの子どもを養育する従業員さまが請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、1ヶ月24時間、1年150時間を超えて法定外労働をさせることができません。また、22時から翌朝5時までの深夜の時間帯に働いてもらうこともできません。また、病気やケガをしたときの子どもの看護、予防接種や健康診断のために1年に5日(子どもが複数の場合は10日)、休暇を与える必要があります。これを「子の看護休暇」といい、1日単位の取得だけでなく、2021年1月1日より、時間単位での取得が可能になりました。

お気軽にご相談ください

いかがでしたでしょうか。出産前や職場復帰後、そのタイミングごとにやらなければならないことがたくさん、しかも似たようなものもあって、内容を整理するだけでも大変かも知れません。ましてご担当いただくスタッフもおらず、社長さま自ら対応されるとなると、それだけで本業に支障が出るかも知れません。そんなことになる前に、ぜひお気軽にご相談くださいませ。