コロナきっかけで在宅勤務を導入された事業所さん、たくさんあると思います。そんな中、在宅勤務時の労災について、どのような取り扱いになるのか、どのようなケースが労災に該当するのか、ご説明させていただきます。

労災の要件

労災は業務災害と通勤災害の2つに分かれますが、今回は在宅勤務のお話をしているので、通勤災害の話は割愛させていただきます。労災の認定を受けるためには、2つの要件を満たす必要があります。まずひとつ目は、労働契約に基づき、事業者の支配下にあるという業務遂行性、ふたつ目は、そのケガや病気が業務と相当の因果関係にある、という業務起因性、というものです。

これって労災?具体例

では具体的に、こういう場合は労災に当てはまるのかどうなのか、例を挙げて見ていきましょう。まず、自宅のデスクで作業中、資料か何かを取るために立ち上がり、再びイスに座ろうとしたときに転んでケガをしてしまった場合。これは、完全に在宅勤務中、仕事中に起こったことですから、業務起因性、業務遂行性、どちらも要件を満たすので、労災に該当すると思われます。続いて、トイレから帰ってきたとき、イスに座ろうとして転んでケガをしてしまった場合。こちらも先ほどの事例と同じく、労災に該当すると思われます。トイレに行った帰りということで、業務と無関係だと思われるかも知れませんが、トイレに行きたくなるのは生理現象であり、業務に付随する行為、ということで労災に認定されると思われます。最後に、在宅勤務を行うことになったけれど、専用のデスクも部屋もないので、リビングのテーブルでクッションに座って仕事をしていたら腰痛がひどくなってしまった場合。これは残念ながら労災には該当しないと思われます。動画で詳しく解説していますが、なぜならこのケースは、労災が想定している腰痛の要件に当てはまらない可能性が高いからです。

きちんと報告すること

通常、オフィスでケガをした場合、周りに人がいらっしゃるのでそのことに気付かれることが多いと思いますが、在宅勤務の場合、何かが起こったとしても、周りに誰もいらっしゃらない場合、本人が報告しない限りその事実を把握することはできません。ま、報告することの重要性というのは何も労災に限った話ではないですが、勝手な判断をさせずに、どのような状況でケガをしたのか、というようなことをきちんと具体的に報告する体制づくりを行い、適切に処理を行っていただきたいと思います。