今年も算定基礎届のシーズンが終わりました。期限内に届出が完了された皆様、お疲れ様でございました。無事に届出が終了し、ホッとされているタイミングかと思いますが、提出しなければいけないのは算定基礎届だけではない、というお話をさせていただきます。
算定基礎届だけではない
社会保険料は、毎年4月から6月に支払われた給与の額で決まり、その届出書類を算定基礎届という。これは、人事労務関係者でなくても、多くの方々が知っておられることかと思います。そしてこのことばかりフィーチャーされているせいで、中には、算定基礎届さえ出しておけば大丈夫、と思ってらっしゃる方がおられますが、残念ながらそうではありません。
月額変更届お忘れではないですか?
社会保険料の仕組みはちょっと複雑で、ざっくり説明すると、まず資格取得のタイミングの給与額で保険料が決まります。そして勤務を続ける中で昇給等があった場合、そのことをお知らせするために、月額変更届という書類を届け出ることになっています。ただし、この月額変更届の手続きを行うのは、給与額が定められた基準以上に変動した場合のみで、その基準に満たない場合は届け出る必要はありません。そしてこの基準に満たない給与額の変動をきちんと保険料に反映させるために、年に1回、算定基礎届を提出する、というわけです。
給与額をきちんと反映させる理由
社会保険は給与額に応じて保険料を負担して、いざという時に給与額に応じた給付を受けることができるものです。例えば傷病手当金、これは病気やケガで仕事ができなくて給与が減った場合にもらえるものなんですが、そういえばコロナになった時にもらったなぁ、という方もいらっしゃるかも知れません。給与額がきちんと反映されていないと、反映前の給与額をベースに傷病手当金が計算されることになるので、あれ、思ってた額と違うなぁということになります。
月額変更届が優先
さて、算定基礎届と月額変更届のタイミングが重なった場合は、どうなるでしょうか。この場合、月額変更届が優先され、その方については、算定基礎届は提出せず、月額変更届を提出するかたちになります。算定基礎届によって決まった保険料が反映されるタイミングと、月額変更届によって決まった保険料が反映されるタイミングは微妙に異なりますので、この手続きをきちんと行わないと、給与額が正しく保険料に反映されません。年金事務所の調査があった際は、この手続きがきちんと行われているかを確認され、誤りがあればさかのぼってその差額を精算することになります。例えば、従業員様おひとりについて、1ヶ月あたり1万円の差額があった場合、社会保険料の時効は2年なので、1万円x24=24万円、社会保険料は会社も同額負担するので、+24万円の合計48万円支払うことになります。もし、そんな従業員様が10名いらっしゃったら480万円。考えただけでゾッとしますよね。
算定基礎届は社労士にお任せください
以上、算定基礎届を出してさえいれば安心というわけではないですよ、というお話でした。簡単そうに見えて、意外に複雑な手続きであることがご理解いただけたら嬉しく思います。もっとも、社長様おひとりの会社様であればこの手続きはとても簡単なので、社長様ご自身でやっておられる、税理士さんがサービスでやってくれている、というパターンも全然アリだと個人的には思います。ただ、従業員さん、特に正社員さんを雇った時点でこの手続きは一気に難易度が上がりますので、そのタイミングでぜひ社労士にご依頼いただければと思います。ちなみに弊所は全国対応可能。クラウドメインでお手続きさせていただいておりますので、紙の書類のやり取りはほとんどありません。どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。