年金制度改正法が、2025年6月13日、衆議院にて成立しました。その内容は多岐に渡りますが、今回は、多くの事業主さまが特に気にされているであろう、社会保険の加入対象の拡大について、解説させていただきます。
短時間労働者の加入要件の見直し
短時間労働者、いわゆるパートさんの社会保険の加入要件が見直されることになりました。2025年6月現在、厚生年金保険の被保険者が51人以上いる事業所さまにおいて、賃金が月額88,000円(年収106万円相当)以上、週の所定労働時間が20時間以上、学生ではない、これら3つの要件を満たす短時間労働者は、社会保険に加入することになっていますが、この法律の公布日から3年以内の政令で定める日以降、賃金が月額88,000円以上という要件が撤廃されることになりました。
これについて、なんでこうなったか補足させていただくと、ご存じのとおり、ここ数年、最低賃金が大幅に上昇しており、2025年6月現在、最低賃金が1,016円を上回っている、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、においては、週の所定労働時間が20時間以上という要件を満たすと、必然的に月額賃金が88,000円を上回ることになります。今後も最低賃金が上昇し続けることは確実で、遅かれ早かれ、全国の最低賃金が1,016円以上になったら、週の所定労働時間が20時間以上の短時間労働者は、例外なく月額賃金88,000円を上回ることになるので、わざわざこの要件を課す意味がなくなってしまうというわけです。この要件撤廃のタイミングは、この法律の公布日から3年以内の政令で定める日、とされていますが、これはつまり、遅くとも3年以内に全都道府県の最低賃金が1,016円以上になるということです。
規模要件を段階的に撤廃
短時間労働者の社会保険の加入要件が適用されるのは、2025年6月現在、厚生年金保険の被保険者が51人以上の事業所さまが対象とされていますが、今後10年かけて、段階的にその要件を撤廃することになりました。まず2027年10月に36人以上の事業所さまが対象となり、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、そして2035年10月以降は10人以下になり、この時点で規模要件が撤廃されることになります。
個人事業所の適用業種を拡大
2025年6月現在、常時4人未満の者を使用する個人事業所さまについては、短時間労働者に限らず、社会保険に加入する必要はありません。また、5人以上の者を使用する個人事業所さまであっても、農業、林業、漁業、宿泊業、サービス業等については、これまた短時間労働者に限らず、社会保険に加入する必要はありません。ですが、2029年10月以降、5人以上の者を使用するこれらの業種の個人事業所さまは、社会保険に加入する必要があります。ただし経過措置として、そのタイミングで既に存在する個人事業所さまについては、期限を定めず適用除外、つまり、引き続き社会保険に加入する必要はない、とされています。
お気軽にご相談ください
今回の法改正を受け、事業所さまが受ける影響は決して小さくありません。社会保険料の負担増、新規採用も含めた雇用の確保など、考えるべきことは多岐に渡ります。少なくともまだ約2年の時間的猶予があるこのタイミングから、来るべきその時に備えるご準備を進めていただき、弊所にぜひ、そのお手伝いをさせていただければと思います。どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。

