お盆休みの最終日、ジム・ジャームッシュ監督の特集上映、JIM JARMUSCH Retrospective 2021を「ナイト・オン・ザ・プラネット」目当てで新風館にあるアップリンク京都へ。新風館の近所に事務所があるので、アップリンク京都はとても身近な映画館であるにも関わらず、こちらで映画を観るのは実は今回が初めて。やわらかくてフカフカの椅子はとても座り心地がよく、ずっと前から気になっていたクラフトコーラの伊良コーラがコンセッションにラインナップされているのも素敵なサプライズ。伊良コーラをテイクアウトするためだけに利用するのも大アリだなって思いました。

初めて観たのは高校生のとき

高校時代、クラスでいちばん、色んな意味で大人びていた女子に教えてもらいレンタルビデオで観たのが最初。ジャッキー・チェンの映画を観て大喜びしていた当時の僕にとって「ナイト・オン・ザ・プラネット」は、とても大人な雰囲気が漂った作品で、彼女の大人っぽい雰囲気とリンクするなぁ、なんてことを思いながら観たことを今でも覚えています。タバコを吸える年齢でもないし、車の免許も持っていない、舞台となっているLAやニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキはおろか、日本国内から出たこともない田舎の高校生だった僕には、夕方から明け方メインのストーリーだったにも関わらず、とても眩しく輝いて見えました。大学に進み、第2外国語にフランス語を選んだのはこの映画の影響、ではないんだけど、大学時代に住んでいた部屋にはバイト代で買ったこの作品のVHSがあり、何度も繰り返し観たものです。それから何度か引っ越しを繰り返す中、そのVHSは行方不明になってしまい、年齢を重ねるにつれ、この映画のことを思い浮かべることもなくなっていたそんなある日、今回のイベント「JIM JARMUSCH Retrospective 2021」のことを知りました。当時、僕のテレビのサイズは少しずつ大きくなったけど、この作品を映画館で観たことは今までなかったので、この機会を逃してなるものかと気持ちが昂り、この夏の思い出のひとつに加えることにしたのです。

良い作品は色褪せない

「ナイト・オン・ザ・プラネット」は単純計算、今から30年ほど前の作品なんですが、それに加えて僕の場合、何度も何度も繰り返し観た映画なんですが、いやぁ、まったく色褪せてないですね。ストーリーは完全に頭の中に入っているし、なんなら所々セリフを覚えていたりもするけれど、これまで味わったことのない感覚や登場人物への感情移入があったり、自分の思い出とリンクしたりして、ただ単に懐かしい映画を観た、というだけではない濃密な時間を過ごすことができました。ストリーミングのサブスクとかで、いつでも手軽に好きな作品にアクセスできる素敵な時代になったけど、それでも映画館でじっくりゆっくりそれだけに集中して作品に向き合うことで得られる体験は特別なものだなって、そんなことを思った夏の昼下がりでした。