日々の仕事でたくさんの文字を追いかけていますが、それはそれとして、食後のデザートのごとく、それとは別に文字を追いかけたいんだけど、このところ、なかなかそんな余裕がありませんでした。そんな暮らしの中、ずっと探し求めていた本をたまたま見つけることができ、タイミング良く手に入れることができました。そしてこれまたタイミング良く、仕事の中での追いかけっこもひと段落。娘が眠りに就いてから僕がベッドに入るまでの束の間、少しずつゆっくりとページをめくる時間を楽しんでいます。
ガラリと変わった詩のイメージ
ずっと探し求めていた本というのは、詩人、菅原敏さんの詩集「裸でベランダ / ウサギと女たち」です。菅原さんとは、昨年の夏、京都で行われたイベントでお会いさせていただいたこともあるんですが、初めて作品を目にしたのは、もうかれこれ10年ほど前。コーヒーにちなんだ詩が毎日アップされる、スターバックスの期間限定特設サイトでした。このサイトで菅原さんの作品に出会うまで、自分の中で「詩」というものは、子どもの頃に読んだ谷川俊太郎さんだったり、思春期の頃に読んだ銀色夏生さんだったり、どこかやわらかくて、甘酸っぱくて、透明感があったり、そして時には掴みどころがなかったりする不思議なものという印象でした。けれど、菅原さんの詩はそんな僕のそれまでの固定概念を覆す、あまりにも斬新で新鮮で強烈なもので、読んだ瞬間から心を鷲掴みにされました。完全に男目線で、時にクールで時にダサくて、哀愁さえも漂ったりする詩。毎日更新されるのが楽しみで仕方なかったのは言うまでもありません。それだけにそのサイトが閉じられたときのさみしさと言ったらそれはもう…。それからしばらくして、今度はYouTubeにて天気予報と詩を融合させた「詩人天気予報」がこれまた毎日アップされるようになりました。ここで僕は菅原さんの声を知ることになるんですが、これがまたすごく良い!朗読されることで、詩そのものの魅力が何倍にも膨れ上がったように思います。この頃になると、いろんなメディアで取り上げられた作品を、菅原さんの声を脳内で再生しつつ読んだりしていました。いやホントBRUTUSの連載が終わってしまったのは残念で仕方ありません。それと入れ替わるような形でJ-WAVEで深夜の帯番組が始まったのが救いではありますが。
ずっと楽しめそう
J-WAVEの深夜の帯番組「Quiet Poetry」を聴いて「裸でベランダ / ウサギと女たち」のページをめくる、それがここ最近の寝る前の過ごし方になりました。前から順番に読みつつ、番組で紹介された作品のページを探し当てて読んでみたり。カラフルなしおりが3本あるおかげで、そんな乱暴な読み方が成立しています。表紙の手触りも独特でgood。読み終わるのがなんだかもったいない気もしたり、読み終わってもずっと楽しめる気もしたり。今回、タイミング良く手に入れることができて本当に良かったです。