厚生労働省のモデル就業規則に、副業や兼業を容認する規定が盛り込まれて早1年あまり。これまでは、どちらかと言うとそれらを認めないケースが多かったように思いますが、新時代、令和においては、これが働き方のスタンダードになるのでしょうか。今回は、副業や兼業を制度として運用するにあたっての注意点を解説しようと思います。
労働時間を通算しなければいけない
例えば同じ日にA社で7時間働いた後、B社で4時間働いた場合。この日は合計11時間働いたことになり、3時間分の時間外割増賃金が発生します。その根拠となるのが、労働時間は事業場が異なる場合でも通算する、と規定している労働基準法第38条。ここでいう事業場が異なる場合とは、同じ会社の異なる事業場だけではなく、事業主が異なる場合も含まれる、とされています。そしてこの割増賃金を負担するのは、原則としてB社。つまり、後から雇用契約を締結した事業所が負担することになっています。仮に、B社での時給が1,000円だとすると、4時間働いた内の3時間の時給は1,250円になります。
労災事故が発生したら
不幸にも労災事故が発生した場合、事故が発生した事業所での賃金に基づく給付、ということになります。仮に副業でケガをして、本業に支障が出たとしても、本業分の賃金は考慮されません。
雇用保険はどうなる?
雇用保険は、適用事業において、1週間の所定労働時間が20時間以上、継続して31日以上雇用されることが見込まれる者を被保険者とします。先ほど、実労働時間は事業場が異なる場合でも通算する、とお伝えしましたが、この場合の所定労働時間は通算しません。なので、所定労働時間が20時間以上の事業所で雇用保険に加入することになります。本業、副業という括りでいうと、大抵は本業の方で雇用保険に加入することになるのではないでしょうか。ちなみに少し極端な例ですが、どちらの事業所でも20時間以上働いている場合は、お給料の額が多い方で加入することになります。